介護は芸術的な営み 2/1
介護とは何か
生活とリハビリ研究所代表 三好春樹
ベッドの脚を切れ
介護と医療は極めて対照的です。医療が「人体」を相手にする分野とすれば、介護は「人生」にかかわる分野です。
どんな死に方をするかーすなわち、人生の最終章をどう生きるか。ここに、介護の大きな役割があります。
認知症が治らなくても、いつも笑顔で幸福そうな老人がいます。介護では、「本人にとって何が幸福なのか」を中心に、本人と家族、介護職が一緒に考えることが肝心です。
その内容は、介護をされる本人が受け身的ではなく、自発的、主体的なほうが良いでしょう。まひした手足や、物忘れする頭でも、〝自分らしく生きたい〟という本人の願いを支える。介護とは、一人一人の暮らしを皆で〝手作り〟していくことなのです。
忘れてならないのは、主人公は介護される側の老人だという点です。
例えば、ベットの脚が高いと介護しやすいでしょうが、寝ている老人が落ちたら危険。柵をしても、乗り越えて顔から落ちる場合もあります。それよりもベットの脚を切って、低くした方が良いのです。こうすることによって、実際に、老人が自ら起き上がったり、お尻から床に下りて動けるようになった人もいます。
また、ショートステイ等を利用する場合、利用者が私物を置ける施設が良いでしょう。昔の写真や思い出の品があれば、介護職にも老人の人柄がわかり、会話も弾みます。
生活とは、私生活であり、個性があるものです。医療は科学的なデータを基に行いますが、どうしても画一的になりがちです。一方、老人の生活歴や趣味などを基にした創意工夫が、介護です。それは、ある意味で芸術的な営みと言えるでしょう。
つづく
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